譲渡担保について
昔は貸金の担保に譲渡担保の相談を受けることがたまにありました。判例上、仮登記担保法の適用を受けるので簡単に自分のものにはならないですよ、と助言して抵当権設定に誘導していました。
昨今は、譲渡担保の登記を目にすることもなかったのですが、珍しく売主の所有権取得原因が譲渡担保という取引の依頼を受けました。
司法書士として買主さんへの説明用にまとめました。色んな考え方があるでしょうし、現実には状況は個々に異なります。
なお、所有権構成とか外部内部移転とか処分清算か帰属清算かとかのややこしい論点には触れていません。
(1)譲渡担保は、貸金の担保目的で所有権移転登記をするものです。
貸金の返済があると元の所有者(債務者)に所有権が復帰します(受戻し)
弁済期に返済が無いと、仮登記担保法を類推適用した適正な手続きが必要です。すな わち、譲渡担保権者は、不動産価格と貸金との差額(清算金)を債務者(譲渡担保設定者)に通知して二か月経過後清算金を支払うことにより譲渡担保権者が確定的に所有権を取得します(帰属清算型)。(債務額の方が大きくて清算金がない場合はその旨の通知をして譲渡担保権者が確定的に所有権を取得します。)
(2)しかし譲渡担保権者が確定的に所有権を取得しているかが登記簿上からは全く分からないため、譲渡担保で所有権を取得した売主から買い受ける場合は、譲渡担保契約の内容、弁済期、弁済がなされたか、弁済がなされなかった場合は、清算金の通知をして清算金を支払ったか等の経緯の聞き取りが必要です。
(3)弁済がなされている場合は譲渡担保権者は所有者ではないので購入不可です。
(4)弁済がなされていない場合は、上記聞き取りに加えて元の所有者、譲渡担保権者連名の印鑑証明書付念書(清算金の通知、支払等をして譲渡担保権者が確定的に所有権を取得した旨)を取得します。
(5)さらに、譲渡担保の登記が登記簿上にあると所有権移転に疑義が生じるので、銀行融資が下りない、次に売却できないなどのリスクがあるため、譲渡担保の登記を抹消し、代物弁済等で登記しなおすことをお勧めします。
(6)上記措置をとらずに購入した場合、判例上、下記のとおり買主は所有権は取得できます。(別紙判決参照)
① 債務不履行になっている場合、第三者への譲渡により受け戻し権が消滅し、譲受人が所有権を取得します。譲受人が背信的悪意者であっても所有権を取得します(平成6年2月22日最高裁判決)。
② 債務者が弁済して受け戻したのに所有権復帰登記をしていなかった場合、譲受人は背信的悪意者でない限り所有権を取得します(昭和62年11月12日最高裁判決)。
(7)判例上所有権は取得しますが、元の所有者からの権利主張で事実上トラブルに巻き込まれるリスクがあります。また、(5)の銀行融資が受けられない、次に売却できないリスクがあります。
(8)経緯の聞き取り、念書、登記原因の抹消・更正の取り付けは売買契約までにクリアする必要があります。