何やかやと言っても関西では別れ(分かれ)の取引(売主買主双方に司法書士が付く取引)がすっかり定着しています。
別れの取引における司法書士の職責、特に買主側司法書士の売主本人確認義務については以前も書きました。ざっくりいうと依頼人が誰かという視点からの職責の理解と依頼の内容が何かという視点からの職責の理解に分かれると。私は後者の理解に立つので共同代理形式であろうが復代理形式であろうが買主側司法書士に売主の本人確認義務があると考えています。
さて、今回書くのは、取引直前の登記事項証明書を取得するのは売主側司法書士か買主側司法書士かどちらかという問題です。
司法書士の職責について依頼内容は何かという視点で判断すると、買主は買主側司法書士に「瑕疵の無い所有権の移転登記」を依頼したのですから、直前の登記事項証明書をあげて、差押は入っていないか、二重売買されていないか、担保権が付いていないかを確認する職責を負うのは当然買主側司法書士ということになります。
ところが私が売主側司法書士で、過去二回、直前の登記事項証明書をあげるのは売主側司法書士であると主張する同業者に遭遇しました。
一回目は、運悪く取引途中に差押が入り買主側司法書士が4時を過ぎて申請を持ち込んだケースです。買主側司法書士は前日に登記事項証明書をあげており当方が登記事項証明書を取得してないことを責められました。
二回目は、土地の共有持ち分が20筆を超えるマンションの取引です。買主側司法書士に、登記事項証明書をあげるのは売主側司法書士だ、どの同業者に聞いてもそう言ってると主張されました。売主に見積もりを出した後なのに。。インターネットで上げようとしましたが情報量が膨大でエラーになり取得できません。人に頼んで法務局に走ってもらいました。かんぜんに赤字の取引になってしまいました😢。
それからは売主側司法書士になった場合も取引直前の登記事項証明書をあげるようにしています。双方取得していなかったという空白が怖いからです。でも、買主側司法書士に直前の登記事項証明書を渡そうとしてもこちらで取得していますからと断られたことしかなくて、どの同業者に聞いても売主側司法書士が登記事項証明書を取ると言ってるという話は、かなり怪しいです。
売主側司法書士が依頼人である売主の物件の登記事項証明書を取るものだという単純な理解なのでしょうが、分かれの取引の業務内容のコンセンサスがないのは危険だと思い続けて10年です。
さて、おまけです。
売主側司法書士は売主から登記識別情報を預かり買主側司法書士に渡します。先日初めて取引の場で買主側の司法書士さんにコピーを取って原本を返されました。そんなものを預かると売主への返却が厄介です。その場で売主に返そうとしたら当方で持っておいてくれと。
登記識別情報は事務所の封筒に入れて登記義務者を記載して封をして申請書に添付します。原本を入れるとどこかに落ちて紛失してしまわないかという一抹の不安がよぎります。最近は申請書にステプラーで留めることにしています。だから紛失のリスクからコピーを取ったのかなとも思うのですが、ならなぜ原本を売主側司法書士に返したのでしょう?
かつての登記済権利証は所有権移転の印が押されて返却されるので登記が完了したら原本を売主に返却しても紛らわしくはなかったです。登記識別情報は一見しても所有権移転の有無が分からないので売主に原本を返却するのは好ましくないように思います。
移転済み権利書を司法書士が破棄しなかったのは、何らかの事情で契約が解除され所有権抹消された場合に元の権利書が生き返るからです。だから売主に返却するなり買主に新しい権利書の後ろに編綴して渡すなりしていました。
所有権抹消はめったにない一方で、登記識別情報の原本を本人に返却するのはそれ自体から移転の有無が分からないという点でリスクの方が高いです。だから原本を出し切ってしまう以外今まで考えたこともありませんでした。
うーんなんでコピーを取って原本を私に返されたんでしょう??