被後見人が施設に入ったので自宅不動産を売却するというのはよくあることです。
それで自宅を探すのですが権利書が見当たらない。いえ権利書の無いのは別にかまいません。居住用不動産売却の許可を裁判所から貰わなくてはならないし、それ貰うと権利書の添付は不要ですから。
問題は売買契約書です。売買代金から取得費を引いた譲渡益が譲渡所得税の課税対象になるのに、売買契約書や領収書がないと取得費を控除できません。取得費が分からない場合は売却代金の5%しか取得費が認められません。譲渡益がどーんと大きくなってしまいます。
権利書も売買契約書もないということは、後見人に勝手に不動産を売却させてはなるものかと身内の方が隠したのではないかという疑念がわきます。真相はやぶの中ですが。。
でもまあ居住用財産譲渡の3000万円の特別控除があります。これを使えばまず譲渡所得税はかかってきません。
ところが昨年3月に不動産を売却した被後見人の介護保険料と後期高齢者医療保険料が跳ね上がりました。
調べてみると、昨年2018年4月1日に介護保険料が改正されていました。2018年4月1日以降は3000万円の特別控除後の一時所得を加算したものが算定基準になると。これなら加算する一時所得は通常ゼロで介護保険料は従前どおりということになります。
反対に、改正以前は3000万円特別控除前の一時所得が加算されたものが算定基準になるということです。取得費5%ですから必ず譲渡益が出てることになります。
売買契約書隠す(失くす?)とろくなことになりません。
しかし3月に売っていますから痛恨の極みです。この改正の知識があって4月に延期したという同業者がいたらほんとうに尊敬します。
4月になると評価証明書を取り直さなければならない、買主に登記費用訂正の連絡をしないといけない、軽減税制が終わってしまうかもしれないということで、通常、なんとしても3月中にという方向で頑張ってしまいますから。
さて後期高齢者医療保険料です。こちらも調べたのですがはっきりしたことが分かりませんでした。
ちなみに介護保険料の改正は、震災で不動産を売却した被災者の介護保険料が跳ね上がるのは気の毒だからという理由のようです。
https://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000148589
市役所の後期高齢者保健課に問い合わせたら調べて答えてくださいました。結論から言うとこちらの方は従来通りで改正はありませんでした。
所得割は3000万円控除後の金額でゼロだが均等割が3000万円控除前の金額で計算され、今まで軽減が適用されていたのが軽減の適用が無くなり満額かかってくるようになったことにより保険料が増えたということでした。(なるほど!)
これですね。
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【所得割額】
退職所得以外の分離課税の所得金額(土地・建物や株式等の譲渡所得などで特別控除後の額)も総所得金額等に含まれます。
【均等割額】
均等割額の軽減を判定する際、総所得金額等では、譲渡所得における特別控除や青色事業専従者給与所得・事業専従者控除額などを含みません。
教訓は、たえずアンテナを張って制度の変更を事前に知っておくこと。それから3000万円控除を使っても後期高齢者医療保険料は跳ね上がると心得え、たとえ売買契約書や領収書が無くても、売主に問い合わせるとか、住宅ローンの債権額を取得費にするとか手を尽くすこと。
正直、後見なんか司法書士の仕事かな?と思っていたのですが、やってみると意外と深いし、司法書士の知識はもちろん、それ以外の広い知識・経験の要求される業務だなと実感しています。
後見人になった以上は、誰がなるよりも本人のためになったというようにありたいと常々思っているのですが、まあぶっちゃけ「わたし失敗しませんから」と言いたいのですが、今回はもっと知識を広めなければ反省しました。