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親の家について遺産分割協議ができない案件で弁護士さんに相談した。弁護士さんは法定相続すれば過半数になるから賃貸すればいいと回答した、さて相続登記はいかほどかかるか、という電話相談がありました。
えっ?賃貸借契約は管理行為だっけ??
あわててコンメンタールを開きました。
やっぱり賃貸借契約は処分行為です。全員の同意が必要です。
少数共有者の使用、収益等を長期間にわたって制約することとなり、事実上共有物の処分に近い効果が生じるからです。
ただし、民法602条の短期賃貸借(建物賃貸借は3年)は管理行為として過半数の同意で足ります。
民法602条
処分につき行為能力の制限を受けた者又は処分の権限を有しない者が賃貸借をする場合には、次の各号に掲げる賃貸借は、それぞれ当該各号に定める期間を超えることができない。
一 樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃貸借 十年
二 前号に掲げる賃貸借以外の土地の賃貸借 五年
三 建物の賃貸借 三年
四
動産の賃貸借 六箇月
建物賃貸借は通常2,3年程度の期間となっています。じゃあこの規定により管理行為として過半数の同意で賃貸することが可能でしょうか?建物賃貸借契約は借地借家法により自動更新されるからまあ普通に常識で考えてダメなんじゃないかと思えます。
(東京地裁平成14年11月25日判決)は、民法第602条の期間を超えない短期賃貸借においても、借地借家法の適用がある賃貸借の締結は、共有者全員の合意なくして有効に行い得ないとしました。
ただし、もともと賃貸による収益を目的とする事業が行われていた場合、賃貸借契約の締結は管理行為であり、共有者の持分の過半数で決定することができるとしました。
ですよね。
令和3年4月21日に民法の一部が改正され、共有に関する規律が変更されています。施行時期は、令和5年4月1日です。
この改正は所有者不明土地問題を端緒とするものです。所有者不明土地の多くは遺産分割未了の「遺産共有地」なので所有者不明土地の円滑な利用・管理ができるように共有制度が見直されたということです。
(共有物の管理)
第二百五十二条
共有物の管理に関する事項(次条第一項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第一項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。
共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。
2 裁判所は、次の各号に掲げるときは、当該各号に規定する他の共有者以外の共有者の請求により、当該他の共有者以外の共有者の持分の価格に従い、その過半数で共有物の管理に関する事項を決することができる旨の裁判をすることができる。
一 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。
二 共有者が他の共有者に対し相当の期間を定めて共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにすべき旨を催告した場合において、当該他の共有者がその期間内に賛否を明らかにしないとき。
3 前二項の規定による決定が、共有者間の決定に基づいて共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。
4 共有者は、前三項の規定により、共有物に、次の各号に掲げる賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(以下この項において「賃借権等」という。)であって、当該各号に定める期間を超えないものを設定することができる。
一 樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等 十年
二 前号に掲げる賃借権等以外の土地の賃借権等 五年
三 建物の賃借権等 三年
四 動産の賃借権等 六箇月
5 各共有者は、前各項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。
4項は従来の規定が整理、明確化されただけのようです。
ですから、改正法が施行されても、借地借家法の適用のある賃借権は自動更新されるので共有者全員の同意が必要ということになります。一時使用目的(借地借家法25、40)や存続期間が3年以内の定期建物賃貸借(借地借家法38Ⅰ)についてだけ、過半数の決定により可能ということになります。
しかし、普通の家をそんな短期で借りる者はまずいません。
弁護士さんが法定相続で過半数になるから建物を賃貸できると断言したというのは、聞き間違いでしょう。
当事務所、電話相談だけ無料としてるのには理由があります。が、その理由とは別にご相談を契機としてこんな風に調べることができるのでそれはとってもプラスの効果です。
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飛び込みで不意打ちで来られても無料にはなりませんのでくれぐれもお気を付けください
(令和4年11月)