ほんとに多いです。分かれの取引。
取引自体はそんなにないのに。。。
前回も書きましたが共同代理方式であれば買主側の司法書士には本人確認義務がないという認識、これ本当に浸透しています。
売主の司法書士にだいぶムッとされたので、共同代理方式なら買主側司法書士に本人確認義務はないという研修でもあったのですか?とお聞きしたら、ないと。
どうしてそんな共通認識が出来上がってしまったのか、謎です。困ったものです。
京都の同期に聞いたら、売主本人が来るときは復代理で、来ないときは共同代理でという使い分けをすることが多いと。
これも共同代理なら本人確認義務を免れるという前提があってのことです。
売主本人が来ないときは売主側司法書士に本人確認を任せて&何かあったときには共同代理という形式で責任追及を免れることができるという目論見です。
この、復代理なら売主本人確認義務があるが共同代理なら売主本人確認義務を免れるという単純な形式論の前提には、司法書士の本人確認義務とは、依頼人確認義務だというものすごく単純明快な理解があります。
そこには、司法書士が何のために本人確認をするのかという職責に対する理解は伺えません。
売主が何を究極の目的として何を司法書士に依頼したのか、買主が何を究極の目的として何を司法書士に依頼したのか、という理解です。
そこを理解していないと、司法書士は登記書類に不備はないかだけを確認して自分の依頼人が本人かどうかだけを確認すればいいということになります。
売主の究極の目的は売買代金の受領につきます。登記書類に不備がないかは、それが代金を受け取る前提条件だから確認するに過ぎないと私は考えます。
代金の支払いが済んでいないのに、では私はこれで、と帰ってしまう司法書士がいます。
所有権移転登記がなされたのに、依頼人が代金を受け取っていなかったらどうするのですか?
代金が小切手(銀行振出じゃないやつ)で払われたのに気にも留めずに所有権移転登記を出して、不渡りになったらどうするのですか?
他方、買主の究極の目的は、瑕疵のない所有権を取得することにつきます。
売主に意思能力がなければ(認知症)売買契約は無効です。売主がなりすまし(地面師)なら売買契約は成立していません。子が親の不動産を無断で売るとか、法人に内紛があって代表者が解任されていたとか、売主の代理人と称する者に代理権がなければ(無権代理)、売買契約の効果は本人に帰属しません。
このような場合、代金を支払ったのに買主は所有権を取得できないことになります。たとえ所有権移転登記がなされても、登記は抹消される運命にあります。
売主の本人確認が、買主が瑕疵のない所有権を取得するためのものである以上、それを行うのは買主側の司法書士であって、買主からの委任事務の内容をなすと考えます。
売主の本人確認を売主側司法書士に丸投げをして、上記のようなトラブル「売買代金を払ったのに所有権が取得できない」という事態になったとき、「売主の本人確認は売主の司法書士に任せていた、共同代理方式だから自分には一切責任がない」と言ったとき、買主は、はいそうですか、とならないでしょう。あんたを信頼して依頼したんだ、と言って当然です。
買主が依頼した弁護士は、復代理方式か共同代理方式かは、買主があずかり知らぬところで司法書士同士が勝手に取り決めた申請形式であり、共同代理方式だからといって買主側司法書士の本人確認義務が軽減されたり免除されたりする理由はない、と主張するでしょう。
裁判所だってそんな形式論で買主側の司法書士を救済してくれるでしょうか?わたしはとてもそんな楽観的にはなれません。
開業したころ(平成5年)はまだ、免許証を確認しますというと、わしが信用できんのか!!と烈火のごとく怒る売主がチラホラいました。
時代は変わり、銀行に自分のお金を預けるのでさえ本人確認書類を求められるようになり、いまどき、本人確認をされて怒り出すおじさんはいません。
それを司法書士が本人確認といわれてムッとするって、どういうことなのでしょう。
それから、分かれの取引、取引の場でチラッと請求書を見ると、いまは報酬規程はないので高い安いは言えないのでしょうが、正直高いです。
売り買い双方の代理をするのにくらべると、片一方からしかいただけないので当然報酬が安くなってしまいます。それを少しでも補填しようとしているのでは?というのはうがった見方でしょうか?