さて、休眠担保権、今回は運よく共同申請によって抹消できた事例です。
担保権者に相続が開始していて相続人が多数いる場合は、相続人相手に訴訟を起こして判決を添付して単独申請で抹消するというのが現実的です。
今回は大正時代に設定された抵当権なのに、戸籍を取り寄せてみたら家督相続、そしてその相続人が子供一人だけだったというケースです。
かなりのご高齢だったのですが、認知症にもなっておられずしっかりされていて、抹消登記に協力していただけました。
いくつか注意事項があります。
その1)
手続きや書類についての説明はお手紙で司法書士がするのですが、やはり、依頼者も一言添えるという気遣いを省いてはいけないということ。
その2)
時効消滅の援用をしてしまうと弁済期の翌日に抵当権が消滅してしまうことになります。何が困るって当初の抵当権設定登記済証なんかまずありません。相続人に印鑑証明書をあげてもらって事前通知で抹消登記することになってしまいます。印鑑証明書なんかお願いしたら協力してもらえるものもしてもらえなくなります。相続による抵当権の移転登記をして登記識別情報を作って今の日付で抵当権を放棄していただく。こういうことになります。
その3)
悩ましいのがいわゆる判付料。いくらするか、どの段階で渡すか、こうするのが正解というものはありません。実際突然手紙を出して驚かしたり、返送してもらったりするわけです。なにがしかのお礼は必要でしょう。
現金書留に手紙の同封ができますので依頼者がお礼の手紙とお金を送るというのもありでしょう。
実際いくらお礼をされたのか、聞いたことはありません。要は気持ちです。
相手の方に協力していただけない、そこそこのお金を要求されるような場合は、とっとと訴訟に切り替えたほうが早いでしょう。
悩ましいのは相続人が数人の場合ですね。今、相続人が3名のケースで任意の協力で進めている案件があります。とっとと訴訟起こせばいいのかもしれませんが、まずは依頼者から任意の協力をお願いするのが筋だと思います。でもこれすると共同申請の書類、説明文書すべて作りますから余分に費用が掛かってしまうんですね。
しかし自分が反対の立場に立ったらやっぱり訴訟起こされたら気分悪いですよね。言ってくれれば協力したのにって思いますよね。
余分に手間暇、費用が掛かっても、そこは省いてはいけないところかなとは思います。