代表取締役の住所非公開、取引先の社長さんに質問されてちゃんと答えられなかったのでちょっと調べました。
平成5年9月1日から、商業登記規則が改正され、DV被害者、ストーカー被害者に限って住所の非公開が限定的に認められていました。
DV被害者、ストーカー被害者であることを証明する公的書類の添付が必要でした。DV等支援措置決定通知書やストーカ ー規制法に基づく警告等実施書面や配偶者暴力相談支援センターの DV被害者相談証明といった公的書類を添付して申し立てる必要があったので厳格ですね。
実務的には遭遇する可能性はかなり低かったです。
ですが更なる改正ではそのような制限なく申し出により住所を非公開とすることができます。
改正案は下に載せておきますね。パブリックコメントも終わっています。改正案のままで施行されるのでしょう。施行は令和6年6月予定です。
1)申し出ができるのは、株式会社設立登記、管轄外本店移転の新本店登記時、代表取締役の就任時、代表取締役の住所変更登記時、清算人の登記時、清算人の住所変更登記時ということになっています。
既存の代表取締役の住所を非公開にしてくださいはできないということになります。ただし住所変更時には可能です。
2)代表取締役の住所の登記が不要になったのではなく、登記したうえで、登記事項証明書、要約書の記載事項が市町村までで以下非公開になるということです。
さて、登記実務家としては非開示の申し出の具体的手続きが気になるところです。
登記申請時に代表取締役等住所非表示措置を講ずべき代表取締役等の氏名及び住所を記載するとともに、上場会社を除き、次の各号に掲げる者の区分に応じ、当該各号に定める書面を添付しなければならないとあります。
1号のイは、登記の申請が資格者代理人(司法書士)によつてされた場合において資格者代理人が当該株式会社の本店がその所在地において実在することを確認した結果を記載した書面又は当該株式会社が受取人として記載さ れた書面がその本店の所在場所に宛てて配達証明郵便若しくは信書便の役務のうち配達証明郵便に準ずるものとして法務大臣の定める
ものにより送付されたことを証する書面
なるほど会社登記で代表取締役の住所地を公開していた趣旨は、消費者被害で本店に訴状送っても架空所在だったりするからですね。私も消費者事件や過払訴訟で代表取締役の個人住所をグーグルで調べたし個人住所宛に書面を出すこともありました。本店が実在すれば代表取締役の住所を非公開にしても困ることはないでしょう。
現地調査より後段の配達証明を添付する方が簡単そうです。
ロは、住民票や免許証の写しに原本証明したものですね。
ハは、資格者代理人が犯罪収益防止法により確認を行つた当該株式会社の実質的支配者の本人特定事項を記載した書面。
えっと、設立時以外はどうするんでしたっけ💦
代表取締役の住所非公開、これは需要もあるし案内もする必要もありますね。
商業登記規則
第31条の3(新設) 株式会社の設立の登記、本店を他の登記所の管轄区域内に移転した場合の新所在地における登記、代表取締役若しくは代表執行役の就任若しくは住所変更による変更の登記、清算人の登記又は代表清算人の就任若しくは住所変更による変更の登記の申請をする者は、当該登記により登記簿に住所を記録すべき代表取締役、代表執行役又は代表清算人(以下この条において「代表取締役等」という。)の住所が記録される登記簿に係る登記事項証明書又は登記事項要約書に、当該住所につき行政区画以外のものを記載しない措置(以下この条において「代表取締役等住所非表示措置」という。)を講ずるよう申し出ることができる。この場合においては、登記の申請書に代表取締役等住所非表示措置を講ずべき代表取締役等の氏名及び住所を記載するとともに、既に当該措置が講じられている金融商品取引法(中略)第2条第16項に規定する金融商品取引所(中略)に上場されている株式を発行している株式会社(以下この条において「上場会社」という。)を除き、次の各号に掲げる者の区分に応じ、当該各号に定める書面を添付しなければならない。
一上場会社以外の株式会社(代表取締役等住所非表示措置が講じられ ていない株式会社に限る。)次のイからハまでに掲げる書面
イ登記の申請がその代理を業とすることができる代理人(以下「資 格者代理人」という。)によつてされた場合において当該資格者代 理人が当該株式会社の本店がその所在地において実在することを確 認した結果を記載した書面又は当該株式会社が受取人として記載さ れた書面がその本店の所在場所に宛てて配達証明郵便若しくは信書 便の役務のうち配達証明郵便に準ずるものとして法務大臣の定める
ものにより送付されたことを証する書面
ロ代表取締役等の氏名及び住所と同一の氏名及び住所が記載されて いる市町村長その他の公務員が職務上作成した証明書(当該代表取 締役等が原本と相違ない旨を記載した謄本を含む。以下この条にお いて同じ。)。ただし、登記の申請書に当該証明書を添付した場合 を除く。
ハ登記の申請が資格者代理人によつてされた場合において当該資格者代理人が犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成十九年法 律第二十二号)第四条第一項の規定により確認を行つた当該株式会社の実質的支配者(犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規 則(平成二十年内閣府・総務省・法務省・財務省・厚生労働省・農 林水産省・経済産業省・国土交通省令第一号)第十一条第二項に規
定する実質的支配者をいう。以下この号において同じ。)の本人特定事項(同法第四条第一項第一号に規定する本人特定事項をいう。 以下この号において同じ。)を記載した書面その他の当該株式会社 の実質的支配者の本人特定事項を証する書面。ただし、当該株式会 社について商業登記所における実質的支配者情報一覧の保管等に関 する規則(令和三年法務省告示第百八十七号)第七条に規定する実
質的支配者情報一覧の写し(当該登記の申請の日の属する年度又は その前年度に同告示第二条の申出をしたものに限る。以下この条に おいて同じ。)の交付又は同告示第二条の申出がされており、かつ 、その旨が登記の申請書に記載された場合を除く。
二上場会社以外の株式会社(既に代表取締役等住所非表示措置が講じ られている株式会社に限る。)代表取締役等の氏名及び住所と同一 の氏名及び住所が記載されている市町村長その他の公務員が職務上作 成した証明書。ただし、登記の申請書に当該証明書を添付した場合を 除く。
三上場会社(代表取締役等住所非表示措置が講じられていない株式会 社に限る。)金融商品取引所に当該株式会社の株式が上場されてい ることを認めるに足りる書面
2登記官は、前項の申出があつた場合において、当該申出が適当と認め るときは、代表取締役等住所非表示措置を講ずるものとする。
3代表取締役等住所非表示措置が講じられている株式会社の登記の申請 があつた場合において、当該措置が講じられている代表取締役等の住所 と同一のものを登記するときは、登記官は、当該代表取締役等の住所に つき、引き続き当該措置を講ずるものとする。 4登記官は、次に掲げる場合には、現に効力を有する登記事項(清算結 了又は第八十一条第一項若しくは第百十七条第三項の規定により登記記
録が閉鎖されている場合においては、当該閉鎖時に現に効力を有してい た登記事項)について代表取締役等住所非表示措置を終了させるものと する。 一代表取締役等住所非表示措置を講じた株式会社から当該措置を希望 しない旨の申出があつたとき。
二代表取締役等住所非表示措置を講じた株式会社の本店がその所在地 において実在すると認められないとき又は上場会社であつた当該株式 会社が上場会社でなくなつたと認められるとき。ただし、当該株式会 社の登記記録が閉鎖された場合を除く。 5代表取締役等住所非表示措置を講じた株式会社が前項第一号に掲げる 申出をするときは、申出書に当該措置を希望しない代表取締役等の氏名
及び住所を記載するとともに、申出書又は委任による代理人の権限を証 する書面に当該株式会社が登記所に提出している印鑑を押印しなければ ならない。 6登記官は、代表取締役等住所非表示措置を講じ、又は終了させるに当 たつて必要があると認めるときは、株式会社の代表取締役等に対し、出 頭を求め、質問をし、又は文書の提示その他必要な情報の提供を求める ことができる。
(令和6年3月29日)