商法、会社法を勉強した者なら、だれでも知ってる“事後設立”
一般の方は、だ~れも知らないというのが“事後設立”
だいたい言葉自体に何の手がかりもないという(汗)
というわけでちょっと解説します。
事後設立とは、会社の設立後2年以内に、設立前から存在する営業用財産を純資産額の5分の1以上の対価で取得する契約を締結することです。
会社法467条1項5号により株主総会の特別決議が必要ということになっています。
会社の設立時に、発起人が会社の成立後に財産の購入を約束することを財産引受といいます。
変態設立事項として定款に記載して、財産の価格が500万円を超える場合は、裁判所選任の検査役の調査が
必要です。
裁判所選任の検査役というのは弁護士さんで、お金も時間もかかります
じゃあ、会社の設立後にずらしちゃえ って誰だって考えたくなります。
そこで、財産引受の厳格な規制を潜脱することを防止するためのものが事後設立規制というわけです。
財産引受も事後設立も設立されたばかりの会社の財産的基盤を危うくして株主に損害を与えないようにとのいうのが規制の趣旨です。
(言うまでもないですが、法律は趣旨がとっても大事です。)
事後設立について、旧商法では、原則として株主総会の決議と検査役の調査が必要とされていました。
私がかかわるのはだいたいが身内だけの会社です。
株主総会の決議は簡単なのですが、検査役の調査となると、コストがかかりすぎて、現実的ではありません。
法律の方がおかしかったんですね。
2005年に成立した会社法では、検査役の調査についてはコストがかかりすぎるという理由で廃止されました。
やれやれです
収益物件を購入するのに税金対策として会社を設立するというのはままあることですから、事後設立というのは、現実には相当数あると思われます。
ところが、まず不動産業者さんは気づかないでしょうし、銀行の融資担当者さんもご存じなかったりします。
じゃあ司法書士が気付くかといえば、その会社が設立後何年かは、代表者事項証明書や印鑑証明書には載ってこないし、履歴事項証明書を見たとしても設立年月日までは見落としてしまうということもあり得ます。
そもそも、事後設立を承認した株主総会議事録は所有権移転登記の添付書面ではないのです。
なので、事後設立に該当することが分かっていても、添付書面ではないのでわざわざ作成しないことも多々あるのではないかと思います。
宗教法人の基本財産の売却なども宗教法人法及び規則に則った手続きが必要なのですが、不動産登記の添付書面とはなっていません。
添付書面となるかどうかは、効力要件をどう考えるか(静的安全を重視するか動的安全を重視するかですね)登記官の形式的審査権からの限界などからくるのでしょうが、全部登記の添付書面にしてもらった方が齟齬がなくてやりやすいですね。
宗教法人の不動産売買で、仲介業者から
売主が売りたい、買主が買いたい言うとるんやからうるさいこというな ってどなられたことがありますから
事後設立についても、法律上は必要な手続きですので、
もし私みたいな小心者の司法書士にあたって、
取引直前になって、株主総会の承認決議が必要ということになっても困るので、
事前に株主総会議事録を準備しておくことがベターだと私は思いますよ。
もしも、株主が海外に居住しているというようなことがあれば、書面決議という方法もあります。
株主総会が開催できないから書面決議なのに、会社法施行規則でこの場合も株主総会議事録を作ることに改正されましたので、そこは要注意です。
会社法第319条第1項に基づき、株主総会の決議があったものとみなされた事項を明確にするため、株主総会議事録を作成するらしいです。
それから、融資は、たいてい多額の借り入れに該当しますから、これも併せて承認の決議をした株主総会議事録を作成します。
第1号議案 営業用財産取得に係る契約承認の件(事後設立承認の件)
第2号議案 資金借入承認の件
なお、取締役会設置会の場合は、この多額の借り入れは取締役会で承認決議をすることになります。
取締役会非設置会社の株主総会は万能機関ですので、法定専権事項のほか、会社に関する一切の事項を決議することができます。
ひゃあ~、簡単に書こうと思ったのに、ずいぶん、ややこしくなってきました
でも、例外規定とかがありますので、全部は書いてないので、これだけ見て分かった気にならないでくださいね。
わたしは責任負わないですから
(定款の記載又は記録事項)
第28条株式会社を設立する場合には、次に掲げる事項は、第26条第1項の定款に記載し、又は記録しなければ、その効力を生じない。(株主総会の権限)
(取締役会の権限等)