司法書士会主催の無料相談の相談員をすると、税金の相談が多くて閉口します。もちろん税金の専門家は税理士さんなので回答する必要性はありません。
でも、税務は司法書士の業務と密接に関連してるから知らないでは済まされません。せっかくだから昨日聞かれた社会福祉法人への遺贈に関する税金を調べてみることにします。ちゃんと頭に残りますように。
相続税
まず、遺贈を受けた方について、一親等の血族(代襲相続人を含む)と配偶者以外への遺贈は2割増しの相続税を支払うことになります。しかし、相続税を支払わないといけないのは個人だけだから受遺者が法人の場合は相続税の対象にはなりません。
法人税
法人には、遺贈によって得た経済的利益に法人税がかかることになります。だけど、社団法人・財団法人・宗教法人・学校法人・社会福祉法人などの公益法人には税制優遇があり法人税もかからないということになります。
不動産取得税
相続、包括遺贈や、相続人に対してなされた特定遺贈の場合には、不動産取得税はかかりません。
遺贈に関して不動産取得税がかかる場合は、相続人以外に対してなされた特定遺贈の場合のみということになります。公益法人等への特定遺贈も不動産取得税はかかってくるということです。
譲渡所得税
問題は遺言者(相続人)にかかってくる譲渡所得税。
遺贈が現金の場合は譲渡所得税の対象にはなりませんが、遺贈が不動産の場合は譲渡所得税の課税対象になります。
不動産を時価で売却したものとみなして、その売却益に対して所得税を課税するというものです。生前の寄付も同じですね。えーという感じがするけど、もちろん譲渡益が無ければ譲渡所得税はかかってきません。不動産の価格がずーっと下落しているから、取得時期によりますが譲渡益が発生しないということも多いでしょう。
相続人がいる場合は相続人が、包括受遺者がいる場合は包括受遺者が遺贈のあったことを知った日の翌日から4か月を経過した日の前日までに準確定申告書を提出しなければならないと。うーんめんどくさいですね。
国、地方公共団体、一定の公益法人等への遺贈の場合には、譲渡所得税を非課税とする特例が存在します。租税特別措置法40条の特例なので40条特例というそうです。この特例の要件が下記のとおりとなります。
「租税特別措置法第40条の規定による承認申請」
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/joto-sanrin/7402/pdf/02.pdf
1. 公益増進
被相続人の遺贈寄付が教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与すること
2. 事業供用
遺贈寄付があった日から2年を経過する日までにその公益法人等の公益目的事業の用に直接供するか又は供する見込であること
3. 相続税等不当減少
その遺贈寄付が被相続人の親族等の相続税や贈与税の負担を不当に減少させる結果とならないこと
「租税特別措置法第40条の規定による承認申請書」を提出し国税庁長官の承認を受けます。
随分むかし宗教法人への寄付で、大型法人という言い方だったと思うのですが、結局大型法人の下記のような厳しい要件に該当せず、寄付者に譲渡所得税が課税されるので譲渡所得税を宗教法人が支払うという約束での寄付になりました。譲渡所得税を支払うことに贈与税がかかるんじゃないか、税金の無限ループだと思ったことを覚えています。
「公益法人等に財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税の特例のあらまし」https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/joto/annai/23300007_01.htm
役員のうち親族の割合が1/3以下
解散した場合に残余財産が国等に帰属する
譲渡所得税の非課税適用は下記のように拡充されているらしい。
<29年改正>不可欠特定財産の承認特例
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12000000-Shakaiengokyoku-Shakai/0000163980.pdf#search=%27%E4%B8%8D%E5%8F%AF%E6%AC%A0%E7%89%B9%E5%AE%9A%E8%B2%A1%E7%94%A3+%E6%89%BF%E8%AA%8D%E7%89%B9%E4%BE%8B%27
<30年改正>特定買換資産の例創設特定買換資産の特例創設https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/h30kouekihoujin_01.pdf#search=%27%E4%B8%8D%E5%8F%AF%E6%AC%A0%E7%89%B9%E5%AE%9A%E8%B2%A1%E7%94%A3+%E8%AD%B2%E6%B8%A1%E6%89%80%E5%BE%97%E7%A8%8E%27
うーん。難しい。必ず税理士さんに相談してください。