民法899条の2の第1項により法定相続分を超える不動産の取得が対抗要件になったのは結構な衝撃で司法書士なら知らない者はいません。
民法899条の2
1 相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第901条の規定により算出した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。
しかしなぜかわたし第2項の規定を見過ごしていました💦
2 前項の権利が債権である場合において、次条及び第901条の規定により算出した相続分を超えて当該債権を承継した共同相続人が当該債権にかかる遺言の内容(遺産の分割により当該債権を承継した場合にあっては、当該債権にかかる遺産の分割の内容)を明らかにして債務者にその承継の通知をしたときは、共同相続人の全員が債務者に通知をしたものとみなして、同項の規定を適用する。
改正前には債権承継通知の規定はなかったですが、債権譲渡の対抗要件は民法467条に規定されていましたし、最高裁昭和49年4月26日判決は、指名債権が特定遺贈された場合、受遺者は債権譲渡の対抗要件を備えなければ債務者や第三者に対抗することができない、と判示していたということです(最高裁ホームページで判決文を検索できませんでした)。
そりゃあそうですよね。
ひとつは、共同相続人の全員で通知しなければならなかったのが改正により受益相続人一名からの通知で全員が通知したものとみなすとされたということ。
もうひとつは特定遺贈だけではなく、特定財産承継遺言(相続させる遺言)であれ遺産分割協議であれ通知が必要ということですね。
割合的包括遺贈の場合は遺産分割協議で確定的に個々の遺産の帰属が定まりますが、相続人に戸籍謄本で払い戻しされるリスクを考えると、遺産分割協議の成立を待たないで早急に遺言書の写しを添付して通知しておくべきかなと思います。
遺言執行者が指定されている場合はこの通知は遺言執行者が行うことになるのですが、私自身が遺言執行者になると報酬がかかるので遠慮して相続人や受遺者を遺言執行者としていたのですが、これ素人にできますでしょうか?
素人の遺言執行者さんは、遺言執行の条文がざっくりだったこともあって就任通知も遺言書の写しの交付も財産目録の交付も何もしてこなかったということがままあったかと思います。
そういうこともあって遺言執行者の職務について改正により詳細に明文化されたのだと思います。そうすると、従来もちゃんとしないといけなかったのでしょうが、改正後はなおさら素人だからといって遺言執行者の職責を果たさないのは通用しないように思います。
ですから、相続人や受遺者が遺言執行者になられている場合には、最低限やらなければならないことの助言はしていますが、執行者でもないのに無償であれこれ助言するのも違いますし、遺言執行者が就任を承諾しながら遺言者の職務を丸投げするのも違うと思うのです。まして改正前の遺言で復任権について書かれていないと躊躇します。
遺言執行者は専門職がなるべきだと考えを改めました。しかし、そのためには専門職は研鑽を怠ってはいけないと自戒を込めて思いますよ。